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2005年10月 4日 (火)

『夏のロケット』(書評)

『夏のロケット』川端裕人

大洗藍司

 海渡英祐という作家がミステリー講座で〈ミステリー〉の定義を聞かれたときの答。「謎、サスペンス、意外性。この内の一要素以上あること」。これほど簡潔で的を得た定義を私は知らない。

 さて本書は、サントリーミステリー大賞優秀作品賞を受賞している。主人公の青年新聞記者は、過激派アジトの写真の中に、高校時代の天文部ロケット班で造った部品を見つける。いったい誰が何故? でも、彼が探り始めるとすぐに旧ロケット班メンバーに行き着いてしまい、謎と言うものではない。その後も、謎など無いなぁ。

 その班は同級生四人組だったが、今また主人公を除く三人が密かに集まり、再びロケットを飛ばそうとしていた。主人公も仲間に加わり、会社そっちのけでロケット製作に打ち込む。素人が造るロケット、造る技術はあるのか、本当に飛ばせるのか、ハラハラ、ドキドキ。でもそれは、サスペンスではなくてスリルだろう。

 高校時代は打ち上げ全てに失敗したが、果たして今回は飛ぶのか、失敗に終わるのか。 実際どちらになるかは読んでのお楽しみだが、成功するにしろ失敗するにしろ予想の範疇(はんちゅう)で、意外性には乏しい。

 あれま、謎もサスペンスも意外性もない。何でこれがミステリーなんだ?


 でもミステリー色は薄とも、青春小説としては逸品だろう。運良く(あるいは都合良く)金はあるものの、素人が、満足な設備も環境もないのにロケットを飛ばそうと企画する。夢は熱い。それは、高校時代からの夢の続きでもあり、人生の夢でもある。


 そしてまた本書には、ロケット開発は素人の開発と関連が深いこと、ロケットとミサイルの違いは何かなど、ロケットに関する蘊蓄(うんちく)も満載。

 つくづく宇宙とは浪漫をかき立てるものだなぁと納得した次第。青春小説に興味のある方、宇宙小説に関心のある方にお薦めしたい一冊である。

〈出版〉文春文庫
〈本文文字数〉七六八字

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今まではお金を出しても、外国に行くことしかできませんでした。しかし、お金を出せば誰でも宇宙に行ける時代が、すぐそこまで来ています。 そこで今日は宇宙への夢を捨てきれない大人達が、自分達でロケットを作って宇宙へ行こうとする青春小説を紹介したいと思います。 ...... [続きを読む]

受信: 2005年10月31日 (月) 21時49分

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受信: 2005年10月31日 (月) 21時50分

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