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2005年10月 8日 (土)

夢みどき

大洗藍司(おおあらいあいじ)

 今日は木枯らしもなく、暖かな陽射しが頬に当たる。小春日和とは、こういう日を言うのだろう。涼子は道端 で立ち止ま り、オーバーを脱いだ。
 ――久しぶりにいい天気。予報では、午後から下り坂で冷え込むと言っていたけれど、本当かしら。
 そんな、せっかくの暖かい日なのに、彼女は雪の夢を見ようとしている。店は、駅から五分ほどの、繁華街の一角にあった。
 受付室に通されると、中にいた白衣の中年男性が、コンピュータの画面から顔を上げた。
「いらっしゃい。初めてですか?」
「はい。あの、お医者様ですか?」
「いえいえ。私が白衣を着ているから、そう思った? 私はここの店長で、医師免許など持っていませんよ」
 笑うと目元にしわができて、人懐っこそうな顔つきになる。どことなく狸に似ている、と言っては失礼か。
「当店のシステムはご存じですか?」
「おおよそのところは」
「では、簡単に説明します。当店では、お客様に選んでいただいたストーリーを脳波と同じ波長で送ることで、お客様に夢を見ていただきます」
 これは、日本のベンチャー企業が開発した《夢見途機》(ゆめみどき)という装置で、日本内科医師会から身体への影 響なしとの見解が出されたのを機に、昨 年販売が開始された。
「ですが、日本精神医学会では意見が割れて、今でも公式見解が出ていません。それを考慮したうえで、夢見途機(ゆめみどき)を使われることに同意されます か?」
「精神に障害は起こらないんですね」
「当杜の試験結果から、現在の医学でわかる範囲では問題なしと考えています」
「では、使ってみます」
 涼子は上京してこの方、後味の悪い夢しか見た覚えがない。会社が面白くないせいだろうか。この就職難の時代、勤め先が見つかっただけでもありがたいと思 わねばならないが、今の仕事に興味はわかず、何かにつけ内輪で固まる同僚たちにとけ込むこともできなかった。だから先日会杜でスキーツアーが企画されたと きも、涼予は参加を断った。だが、行かないとなると、無性に雪を見たくなる。
「どんな夢にします?」
「雪を体感できるような夢」
「雪ですか。スキー旅行がありますが、これなんか如何です?」
「スキーはちょっと……。私は南国育ちで、上京して二年になりますが東京も雪が降らなくて。だから、スポーツとか、そういうものじゃなくて、ああ雪だな あって思えるような夢を見たいんです」
 スキーツアーを断ってスキーの夢を見に来たのでは、何とも惨めだ。
「難しいリクエストだなあ。キーワードに《雪》が入って、スポーツを除外するとなると、一本だけですね。ええ と……」
 店長は画面を見たまま、しばし黙り込んだ。
「うーん。お薦めとは言い難いな。楽しい夢になるかわかりませんよ」
「はい」
「雪の中にいるという、それだけの内容。癒しをテーマに静かな基調。映像で言えば、映画と言うより環境ビデオ。作者から、はっきりしたストーリー展開がな いので、面白い夢になるか暗い夢になるか、本人の精神状態によるのではないか、とのコメントがあります」
「それで緒構です。雪さえ出てくれば楽しい夢になると思います」
 そうは思っていなかった。雪を見たくなったのは、現実逃避であろうと自覚している。とすると、楽しい夢が見られるだろうか? けれど他にソフトがないの では仕方がない。
 指定された部屋に入り、用意されたパジャマに着替えると、装置を頭にかぶってベッドに横になった。

 本を読むのに、今日は適しているとは言い難い。寒いし、少々暗い。空には灰色の分厚い雲が垂れ込めている。けれど、昼問だけあって暗すぎるわけではな く、風がないので寒さもそう気にならない。
 東京に知り合いのいない涼子は、いつしか屋外で本を読む趣味を持つようになった。今日も公園のベンチで文庫本を読んでいる。頁をめくろうとすると、手の 甲に白いものが付いているのに気がついた。
 ――雪? 雪が降ってきたのかしら?
 でも、手の雪はなかなか溶けない。よく見ると花びらだった。小さな、白い、花びら。
 と、目の前を白い花びらが一つ、ゆらゆらと落ちてきた。また一つ。
 頭上を見ると、満開の桜があった。真っ自な花を咲かせ、灰色の雲をバックに、薄い輝きを放っていた。
 ――こんな真冬の、こんなに寒い日に、満開の桜なんて……。涼子は文庫本を閉じ、しばらく桜を見上げていた。降り落ちる花びらは、その量を次第に増やし てゆく。そのとき、むき出しの腕に鈍い冷たさを感じた。
 ――雪? 今度こそ、本当に雪? 上から白いかけらが降ってくる。花びらと雪。同じくらいの大きさで、薄い輝きを持って降るのが桜の花びら、その輝きに 冷たく映えているのが雪。花びらと雪が混ざりながら、さらさらさらと降っていた。

 さすがに雪国の夜道は美しい。涼子は、人っ子一人いない田舎道をゆっくり歩いている。
 昨日の夢見途機は、充分に満足のいくものだった。常識で考えれば、真冬に桜が咲くはずも、その時期に半袖になるはずもないのだが、夢の中では不思議に思 わず、ただただ感動していた。その感動が目覚めてからも続いていたのだろうか、無性に本物の雪を見たくなった。触りたくなった。思わず新幹線に飛び乗り、 タ方、これといった観光名所もない、山中山の田舎町にたどり着いた。
 雪が見たくて来たと言う涼子に、そんなもんですかねえ、雪などやっかいではあっても、ありがたいもんじゃないんだけどねぇと、宿の女将は眩いたものだ。
 タ食前にさんざん雪を堪能してはいたが、窓から見える月の冷たさに惹かれて、夜の雪道を散歩したくなった。
「なにもこんな夜中に、雪を見に行かなくても。明日の朝でも見られるに」
 でも、どうしても行きたかった。
「玄関の鍵は開けておきますから、帰ってきたら声をかけてください」
 門限を過ぎているにもかかわらず、女将は優しく送り出してくれた。
 外は、雪が月の光を反射して、思いのほか明るかった。人家や畑は一面に雪が積もって明るく輝き、除雪された道に闇が集まっている。光と闇のコントラス ト。これも雪国の風物詩なのだろう。
 今夜は満月だろうか。まん丸の青白い月が、こぼれ落ちそうな星と共に輝いている。冬の月は、どうしてこんなに冷たいのだろう。夏の月が暑そうには見えな いが、冬の月は間違いなく冷たい。中秋の名月の、温(ぬく)もりのある艶やかさとはまた別の、気位の高い冷ややかな美しさ。人を寄せ付けないその美しさ を、涼子は好んでいる。
 立ち止まって空を見上げると、冷たい月を中心に、無数の星が氷の破片のように散らばっている。その星々の瞬きの中から、ひとつが地上に落ちて来た。
 ――星が落る? そんなはずはないわ。では……、雪? 昨日の夢で見た桜の花びらのような。
 顔に落ちてくる雪は、月の光を帯びて、きらきらと反射する。月が、星が、雪が、それぞれ光を重ね合う。雪は次第に量を増し、さらさらさらと降っており、 あたりは妖しい輝きに包まれる。月夜の雪は、かくも美しかった。

「如何でした?」
 夢を見終わったあと、涼子は再び受付室に来ていた。
「実は、少しばかり心配だったのですよ。いい夢が見られたのか」
 涼子は、興奮気味に夢の粗筋を伝えた。
「大満足です。劇中劇ならぬ夢中夢なんて思いもしませんでした。二度目の夢では、夢見途機(ゆめみどき)を使った記憶も、店長さんと話した記憶もあるんで すよ。実生活そのもので、まさか夢の中とは……」
「脳に刺激を与えて夢を見させるので、ストーリーと記億がシンクロされて、夢と現実の区別がつきにくくなることがあるのです。もちろん、荒唐無稽な夢のこ ともあります。何故こうした違いができるのかわかっていませんが、こういう装置ができたからには、おいおい解明されていくでしょう」
 気が向いたらまた来てください、必ず来ます、そう言葉を交わして涼子は店を後にした。外は、風はないものの空は薄黒い雲で覆われ、気温は低く底冷えがす る。
 ――たかだか二時間で、こうも変わってしまうとは。天気予報は当たったわ。
 駅に向かって歩き出すと、頬に冷たいものが当たった。
 ――雪! 雪の夢を見に行った帰りに雪が降るなんて。今日は雪づくしだわ。
 立ち止まって、しばらく空を仰いだあと、オーバーの襟を立て、身震いしながら早足に歩き出した。
 雪は次第に降る量を増し、さらさらさらと、流れるように降り続いた。

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2005年10月 4日 (火)

『夏のロケット』(書評)

『夏のロケット』川端裕人

大洗藍司

 海渡英祐という作家がミステリー講座で〈ミステリー〉の定義を聞かれたときの答。「謎、サスペンス、意外性。この内の一要素以上あること」。これほど簡潔で的を得た定義を私は知らない。

 さて本書は、サントリーミステリー大賞優秀作品賞を受賞している。主人公の青年新聞記者は、過激派アジトの写真の中に、高校時代の天文部ロケット班で造った部品を見つける。いったい誰が何故? でも、彼が探り始めるとすぐに旧ロケット班メンバーに行き着いてしまい、謎と言うものではない。その後も、謎など無いなぁ。


 その班は同級生四人組だったが、今また主人公を除く三人が密かに集まり、再びロケットを飛ばそうとしていた。主人公も仲間に加わり、会社そっちのけでロケット製作に打ち込む。素人が造るロケット、造る技術はあるのか、本当に飛ばせるのか、ハラハラ、ドキドキ。でもそれは、サスペンスではなくてスリルだろう。


 高校時代は打ち上げ全てに失敗したが、果たして今回は飛ぶのか、失敗に終わるのか。 実際どちらになるかは読んでのお楽しみだが、成功するにしろ失敗するにしろ予想の範疇(はんちゅう)で、意外性には乏しい。


 あれま、謎もサスペンスも意外性もない。何でこれがミステリーなんだ?



 でもミステリー色は薄とも、青春小説としては逸品だろう。運良く(あるいは都合良く)金はあるものの、素人が、満足な設備も環境もないのにロケットを飛ばそうと企画する。夢は熱い。それは、高校時代からの夢の続きでもあり、人生の夢でもある。



 そしてまた本書には、ロケット開発は素人の開発と関連が深いこと、ロケットとミサイルの違いは何かなど、ロケットに関する蘊蓄(うんちく)も満載。


 つくづく宇宙とは浪漫をかき立てるものだなぁと納得した次第。青春小説に興味のある方、宇宙小説に関心のある方にお薦めしたい一冊である。

〈出版〉文春文庫

〈本文文字数〉七六八字

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2005年10月 1日 (土)

ノーと言わせてくれ(最終回)

「ブー、ブー、ブーッツ!」けたたましいブザー音と共に武田の入っているカプセルが開いた。
武田はどこかの大草原で寝ているような感覚で目が覚めた。しかし次の瞬間、突然激しい頭痛と吐き気が武田をおそった。それから何時間も武田はかつて経験したことのないような激しい頭痛と吐き気に襲われ続けた。ようやく意識が回復してきた武田の脳裏に「目覚めは快適なもんですよ。」という言葉が浮かんできた。
「何が快適なもんですよだ!最悪じゃないか。」
武田は自分の考えで行動が起こせるようになるまでさらに1日費やした。このとき武田はなぜ他の宇宙飛行士たちが辞退していったのかが理解できた。
ようやく歩けるようになって、自分の状況を確認できるようになった。
「今はどこなんだろう、予定では目覚めたときには木星の目前にいる筈だが。」
武田はコンピュータに向かって質問をした。
「コンピュータ今の位置を教えてくれ。」
「現在白鳥座のあたりにいます。」
「なんだって!何かの間違いだろ。」
「いえ間違いありません。光速飛行テストのとき巨大な隕石に衝突しそうになりそれを回避するために大きく起動がそれてしまいました。その後も正規ルートへの軌道修正を試み重力カタパルトを利用して飛行しているうちにここに来てしまいました。なにしろ燃料に制限があるため最小距離では飛行不可能ですから。」

(重力カタパルトとは惑星の重力を利用してロケットの推進力を得る飛行方法だ。ボイジャーもこの方法を利用してエネルギーを抑えて遠くの惑星に飛行を続けている。)

「何てことだ!!どこまでついていないんだ。こんなことなら里香の言うとおりはっきり断っておけばよかった。」
「コンピュータ、ところで現在の計算では間違いなく帰れるんだろうな!」
「それは問題ありません。ただ少しの点を除いては。」
「何だ!少しの点とは?」
「隕石回避のときに大規模な軌道修正計算をしなければならなくなったのですが、計算用の記憶メモリーが足りなくなったため一部の重要度の低い情報を消去してしまいました。ところが今になってその情報がどうしても必要なのです。」
「どんな情報なんだそれは。」
「それはブラックホールに関する重力場の計算の情報です。」
「どうしてそんなものが今必要なんだ。」
「現在突然予期しなかったブラックホールが現れたためこれを回避しながら事象の地平線の外をぎりぎり飛行しています。」
「なんだって計算を間違えたら中に落っこちちゃうじゃないか。この事象の地平線の中に落ちたら光でさえ外に出られないんだぞ。」
「その通りです。しかしここまでの計算は確かに間違っていません。しかし、最後のところに来て計算が出来なくなってしまいました。」
「どんな計算なんだ。」
「あと20時間後に逆噴射する予定だったんですが、この計算だけが情報が足りなく不十分なのです。それまでの計算結果によると、その20時間後の逆噴射をするか、しないかのどちらかが正しいことが判明しています。このまま行くと丁度20時間後に逆噴射をしますけれどよろしいですか?返事はイエスかノーのどちらかで良いですのでお答えください。20時間以内にどちらの返事もない場合は逆噴射することにします。それではどちらかの返事をお待ちしています。」
「ちょっと待てよ!なんてついていないんだ。冗談じゃないよまったく。いったいどうすればいいんだ・・・」
武田はしばらくの間呆然と立ち尽くしていた。その目はいつものようにどこかの遠くを見つめているようだった。ただしこの時ばかりはその目の先は果てしない宇宙空間に向けられていた。
「よく考えろ。どうすればいいんだ。一体全体どうしてこんなことになってしまったんだ。」
武田はかなり混乱していた。それは今おかれている状況のせいか長期冷凍睡眠のせいでもあるのか、自分がこの計算の専門だということまで中々思い出せないでいた。それから一時間ほどたち武田はようやく我に返った。「そうさ、ボクは何十年もこの計算をやり続けたじゃないか。一日あれば自分で計算しなおすぐらいできるさ。」
武田はそれから飛行船の床にマジックで計算式を書き始めた。それから10時間程で飛行船の床は数式で一杯になった。
「よし、これでようやくすべての計算式が書き終えた。あとは数値を入れてチェックさえすればいいだけだ。」
このとき残り時間は9時間とせまっていた。それから武田はコンピュータにプログラムを組み計算を始めた。長い冷凍睡眠の影響もあってかプログラム作成には結構時間をついやしてしまった。最終的な答えがでたのは残された時間の残り30分前だった。武田は自分の運命がかかっているこの計算を確かめるために、残されたすべての時間を計算のチェックに費やした。そして運命の時間の1分前になってようやくその最終結果が確認された。「やっぱりそうか、逆噴射なんていらないんだ。コンピュータの計算には相対論の肝心な式が抜けていたんだ、逆噴射なんてしたらブラックホールに落っこちちゃうじゃないか。このまま飛行を続ければ帰れるんだ。」
武田の顔は絶望からみるみるうちに精気と希望がよみがえってきた。
「やった!とうとうやったぞコンピュータの答えは間違っているんだ。」武田は今まで彼の人生でなかったほど興奮していた。そして大声でさけびだした。「やたぞ、帰れるぞ。よし!よし!やったぞ!イエス、イエス、イエース!」
武田は興奮が抑えられなかったのかガッツポーズをしながら叫んでいた。
「・・・了解いたしました。逆噴射いたします。」
武田はあまりにも興奮していたためこの時コンピュータが武田に最終確認をしていたのに気がつかなかったのだった。
「えっ・・、違う!!違う!!答えはノーだノー、ノー。逆噴射は中止しろ。」
しかし時はすでに遅かった。コンピュータはすでに逆噴射を作動させてしまっていた。
「プシュー」宇宙船の逆噴射が始まった。
「だから違うんだってば、さっきのは回答でなく興奮して叫んだだけなんだ。止めてくれそんなことをしたらブラックホールに落っこちちゃうじゃないか。」
武田の痛切な訴えとは裏腹に無常にも宇宙船はしずかに事象の地平線の中に吸い込まれていた。

「卵を落としたのは俺じゃないんだ。ノーなんだ!」
「NASAなんて行きたくなかったんだ。ノーなんだ!」
「人質なんかになりたくなかったんだ。ノーなんだ!」
「宇宙飛行士なんかなりたくなかったんだ。ノーなんだ!」
「逆噴射なんてさせたくなかったんだ。ノーなんだ!」
「里香と別れたくなかったんだ。ノーなんだ!」
「誰かきいてくれ!全部ノーなんだ。ノー、NO!、NO!!・・・」


「ブラックホール」そこは物質も光も音もすべてのものを吸い込んでしまう空間である。もはや武田の声は誰にも届くことはないであろう。願わくば「ブラックホール」のその先が何処かの宇宙空間と繋がっていて別の空間に放出されるかタイムワープによって時間が戻ってくれることに期待するしかない。
そこで武田はそして、彼の次の人生ではきっと相手の正面を見て「ノー!!」と言えるに違いないであろう。

(終わり)

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ノーと言わせてくれ(9)

それから武田の宇宙飛行の訓練が始まった。
技術スタッフの説明が武田にされた。
「木星には片道三年で往復六年かかります。あと現地の調査が一年合計七年の年月が必要です。ただし、この飛行計画はロケットの最大速度が高速の十分の一まで加速するテストが含まれているめ、飛行中は最新の冷凍睡眠技術を利用します。」
「冷凍睡眠!」
「ええ、すでに人体テストも実証済みですのでご安心ください。なーに、目覚めは最高の気分ですよ。しかもこの技術を使えば理論上は一万年の旅行も可能になりますからね。」
武田はその後宇宙飛行のための訓練を受け1年後木星へ出発の日がやってきた。
武田は大勢の人々に見送られ、人類の未来のためにと送り出されることになった。
乗船の直前には里香もやってきて「7年は長いわね。待ってられるかしら?」と微妙な言葉を投げかけていった。
武田は宇宙船に乗り込むとスタッフが待っていた。冷凍睡眠の準備をするためだ。武田は人が一人くらいはいるカプセルの中に寝かされた。
「本当に大丈夫なんですよね?ちゃんと目覚めますよね?」
「なーに、何も問題はありませんよ。目覚めは快適なもんですよ。いい夢をいっぱい見てください。」担当技術者はそう武田に言葉を投げかけると。冷凍化のスイッチを押した。
プシューという音とともにカプセルの中は一面ガスに覆われた。

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