魔術師(書評)
『魔術師』江戸川乱歩
大洗藍司
日本ミステリー界の偉人を一人挙げるとすれば、何と言っても江戸川乱歩だろう。小説家としてだけでなく、海外ミステリの紹介や、江戸川乱歩賞の創設など、多大な功績を残している。特に乱歩賞に関しては、私は、日本ミステリの原動力になったと理解している。
私は数年前、久方ぶり 子供の頃の怪人二十面相・少年探偵団のシリーズ以来だろうに『二銭銅貨』『人間椅子』(どちらも傑作!)などの短編を読み、改めて乱歩の面白さを知った。
だが本作は、それらの短編とは明らかに雰囲気が違う。乱歩の初期の短編が本格や怪奇の傾向が強いのに対して、本作はいわゆる大衆小説であり、少年探偵団シリーズに共通する楽しさや明るさがある。
蜘蛛男事件を解決した探偵明智小五郎は、休養中の湖畔で美女玉村妙子と懇意になる。一方東京では、実業家福田徳二郎(彼女の叔父)のもとへ、数字が書かれた紙が届く。誰も入れないはずの部屋へ、毎日数字が減りながら届けられる。妙子の要請により福田家の事件に乗り出した矢先、明智は賊に誘拐されてしまう。そして福田家で惨殺事件が起こり、更に事件は宝石富豪玉村家にも及んでいく。明智探偵の命運は、玉村家の人たちの恐怖は、如何に!
この小説を読むと、読者を楽しませようとする心意気はこういうものかと感嘆する。探偵活劇という言葉はないだろうが、そう呼びたくなる活劇小説である。特に、弁士調とでも言うのだろうか、独特の言い回しが心地よい。
ついでに言うと『吸血鬼』は、裸体像彫刻を壊すと全裸の女性遺体が出てきたり、唇がなく歯剥き出しの男が登場したりと、サービス満点の傑作である。小林少年も初登場。そして吸血鬼事件のあと、明智は魔術師事件で知り合った女性と結婚する。ちなみに光文社文庫版には、『魔術師』と『吸血鬼』が併録されている。
〈出版〉春陽堂文庫、創元推理文庫、ポプラ社文庫『少年探偵12 』、光文社文庫『江戸川乱歩全集6』、他
〈本文文字数〉七五四字
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コメント
大洗さんの文章は書評のお手本のようですね。参考になります。読みたくなります、、、と書きたいところですが、
「裸体像彫刻を壊すと全裸の女性遺体が出てきたり、唇がなく歯剥き出しの男が登場したり」
いや、そういうサービス私には必要ないんです。ごめんなさい、読めません。
江戸川乱歩のそういうところが、と言う人のために、敢えて違う角度で書くというのも書評家のワザかと思います。生意気言ってすいません。
投稿: アマサイ | 2005年9月13日 (火) 17時03分