蟲供養(3)
***
貴志に送ってもらってアパートに戻った塔子は、その日一日中を眠って過ごした。
目が覚めてみると、すでに日は暮れ、部屋は暗くなっている。空腹を覚え、よろよろとベッドから這い出した塔子は、冷蔵庫を開けてみた。だがすぐに食べられるものは入っていない。
コンビニに何かを買いにいくのも億劫だ。しかたがないので米を洗い、ご飯と卵だけの食事をとることにした。
ご飯が炊けるまでの間、塔子はぼうっとしながらテレビを眺め続けていた。しかし昨夜のことが思い出されて、気味が悪くて仕方がない。
―――いったい、あれは何だったのだろう。
貴志も、塔子と同じものを見たようだ。二人で同じ幻影を見たとでも思いたいが、あの光景は今もはっきりと思い出す事ができてしまう。いくら打ち消しても、眼窩から這い出す黒い虫の触覚の動きが目に焼き付いて離れない。
炊飯器がピー、という音を立てて、米が炊けたことを知らせた。塔子は台所に立ち、目玉焼きを作ってご飯をよそい、小さなテーブルに並べた。
テレビを眺めながら、目玉焼きをつつく。よそ見をしながら箸でご飯を掬ったら、箸からすべてこぼれ落ちてしまった。
箸で茶碗を顎の下まで引き寄せて、もう一度ご飯を掬う。だが、またこぼれる。
「ああ、もう!」
ちょっとイライラしながら視線を茶碗に移し、もう一度箸でご飯を掬った。米粒のかたまりは箸に乗るが、塔子の見ている前ですべて茶碗の中にこぼれ落ちる。
―――箸の持ちかたが悪いのかしら?
箸をきちんと持ち直してもう一度掬うと、米粒のかたまりは見る見るうちにばらけていった。
―――何で?
さらにもう一度掬い、よく目を近づけて米粒を眺めると、米粒のひとつひとつはうねうねと動き回り、箸の間からテーブルにこぼれ落ちていった。
塔子は箸と茶碗をテーブルの上に放り出した。横倒しになった茶碗からは、米粒がわらわらと這い出してくる。その形はすでに米粒ではなくなり、涙のように片側がすぼまって、尖ったほうには茶色い点が見えた。蛆だ。
「いやあ!」
塔子は悲鳴を上げてテーブルから後ずさった。白い蛆たちはテーブルの上で、その身を捩って蠢いている。
塔子は台所に走ってビニル袋を取り、茶碗ごと蛆虫たちを袋の中に捨てた。テーブルにこぼれた分もティッシュペーパーを使ってかき集めた。炊飯器の中身もすべて捨てた。ただのご飯にしか見えなかったが、もう、食べる気が起きなかった。
ビールを飲んで空腹を紛らわせ、テレビをつけっ放しにしてベッドに横になる。このまま明日の朝までゴロゴロして、朝になったら何かを食べに出よう。
そうやってうとうとしていると、どこからかカリカリという音が聞こえてきた。がばっと起き上がって耳を澄ましてみる。カリカリ、シャリシャリ、と、何かがビニル袋を擦っているような音。さっき捨てた米粒だ。
見に行きたくない。だが、放っておいてビニル袋が破けてしまったらと思うと、いても立ってもいられない。
塔子は意を決して台所に立つと、さっきのビニル袋を中身を見ないようにしながら掴み、大急ぎで玄関を出て芥捨て場に投げ捨てた。ぐしゃりと音を立ててコンクリートに放り出されたビニル袋の中身は、ただのご飯のようにしか見えなかった。
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コメント
こんなきもい話書く人の気が知れん(-_-;)。と思わせることができたということはキモ悪系ホラーとしては上出来ということでは?最も私はタイトルを見ただけで、「うっ」と来ましたが。故に、個別のコメントは遠慮させてください(;_;)。もっとぐじゃぐじゃ、うじゃうじゃ書くのもありと思います。これからもがんばってください。
投稿: アマサイ | 2005年9月12日 (月) 13時17分