« 蟲供養(5) | トップページ | 失敗作(1) »

2005年9月14日 (水)

『放浪処女事件』(書評)

『放浪処女事件』E・S・ガードナー

大洗藍司

 ご存じ、ペリー・メイスンものである。
 ベロニカという、田舎から出てきた無邪気で可愛い若い女性。彼女が浮浪者として逮捕される。彼女にぞっこんになった この小説では男性たるものほとんどが彼女の純真、無垢、素直という魅力にほだされる デパート経営者アディスンは、メイスンに保釈と解決を依頼する。メイスンとの接見で彼女は「ホテルから散歩しただけ」。調書には客引きしていたように見えたとある。どちらが本当か? メイスンは警官に提訴を取り下げさせる一方で、アディスンに言う。「彼女は迂闊者か、それともまた、自分からわざと逮捕されようとしたのか、そのどちらかです」
 彼女との関係を「車に乗せただけ」と言い張るアディスンは、メイスンの言葉を信用しない。だが案の定、ハンセルというゴシップ屋から彼女のことで強請(ゆす)られる。助けを求められたメイスンは、偽造手形でゴシップ恐喝屋をやり込める。が、偽造詐欺が警察にばれて、逆にメイスン自身が窮地に追い込まれる。
 一方、犬猿の仲だったデパートの共同経営者が射殺され、容疑がアディスンにかかる。
 処女のように無垢なベロニカと浮浪容疑逮捕、ゴシップ屋ハンセルの強請、デパート共同経営者の殺害事件、これらがどう絡むのか? 依頼主アディスンをメイスンは救えるのか? そもそもメイスン自身、自らの偽造手形詐欺容疑から脱せられるのか?
 特に裁判シーンが秀逸。ガードナーは作品数が多くて私は数冊しか読んでいないが、その数冊の裁判シーンの中では本書が最も良くできている。それに、恐喝屋をやり込める方法も痛快だし、最後のどんでん返しも、ちょっとあざとい気もするが、見事と言っていい。
 なお、私の高校時代の友人は、A・A・フェア名義『屠所の羊』を薦めていた。これも秀作。

〈出版〉ハヤカワミステリ文庫
〈本文文字数〉七三八字

|

« 蟲供養(5) | トップページ | 失敗作(1) »

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 『放浪処女事件』(書評):

« 蟲供養(5) | トップページ | 失敗作(1) »