失敗作(6)
6
とても暗い。時間が流れていない。
体の奥に突き刺さっているかのような悲しみが、ぼくの体を内側から冷たくゆさぶる。
もうさんざん悲しんだっていうのに、考えることを止めようとしても、止めようとすればするほど、ぼくはまた泣いていた。
えみちゃんは、最期まで無邪気だった。えみちゃんの命を奪ったあの男たちはぼくから光を奪ってしまった。だけどぼくは光がなくなって闇が見えるようになった。
ぼくたちは、失敗作なのだ。
あのとき、男たちはぼくを縛り付けて、えみちゃんをどこかに連れて行った。しばらくしてから警官がやってきた。ぼくは叫んだ。
「えみちゃんは無事ですか? 大丈夫ですか?」
青白い顔をしたその警官は口をわずかに開いてこう言った。
「えみちゃん? ああ、えみちゃんって言うのか、あの肉」
もう何日が過ぎたのだろう。目が覚めても何も変わらない。結局ぼくはここにいる。
ぼくにはある予感があった。そしてきっとその予感は当たるはずだった。
不思議な気持ちだった。寂しくはなかった。それが、当たり前のことのようにも思えた。でも少し、気になることもあった。だけどぼくにとっては、もうどうでも良いことだった。
ドアが開いた。光が差し込む。
願わくば、向こうでえみちゃんと再会できますように。
ぼくは祈りをこめて振り返る。
「お母さん?」
終
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コメント
処女作としてはとてもいい出来ではなかろうか。
テーマ自体は「ソイレント・グリーン」のようなSFを彷彿とさせ、エンディングも暗い結末を予感させるが、ありきたりでない展開に才能を感じる。
この人は、何作か書いて、新人賞に応募することになるだろう。
次作が、かなり楽しみです。
くりかえしになるが、生まれて初めて書いた作品なのである。
投稿: 竹内薫 | 2005年9月21日 (水) 08時45分