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科学作家という言葉の意味

よく「猫好き科学作家」って何ですか、という質問を頂戴する。

「猫好き」の部分はいいとして、「科学作家」というのは聞きなれない言葉だからだろう。

もちろん、これは英語の「サイエンスライター」の直訳にすぎない。だが、日本では「ライター」には、微妙なニュアンスが付随していて、あまりいい言葉ではないのだ。

たとえば「フリーライター」とはいうが、「ヒストリーライター」とはいわない。「歴史作家」というのは、作家の中でも最上格とされていて、英語なんか使わないからだ。

あるいは、「SF作家」とか「ノンフィクション作家」のように、英語と日本語の折衷パターンもあるが、なぜか「フィクション作家」とはいわずに「小説家」とか単に「作家」と呼ぶ。

以前、筒井康隆さんが、わざと「作家」ではなく「SF作家」という肩書きで呼んでくる新聞記者に対して怒っていたが、「貶めるニュアンス」には、簡単な法則があるわけだ。

つまり、こと文筆業に関しては、カタカナや英語を多くすればするほど、地位が低いのである。

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先週のJAM THE WORLDのゲストに来ていただいた、科学ジャーナリスト大賞を受賞した北村雄一さんは、受賞者とも思えないほど暗かったが、日本におけるサイエンスライターの地位の低さと収入の低さゆえの真情の吐露だったのだろう。

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サイエンスライターではなく「科学作家」という肩書きを使うといいことがある。科学色の強い小説を書いても糾弾されないのだ。だって、ライターじゃなくて、作家なんだからさ。

わかりにくいかもしれないが、歴史作家が史実をもとに、自由な創作を加えて作品を書くシチュエーションを考えてもらいたい。歴史的に存在しない人物を登場させても、誰も歴史作家をつるし上げたりしないだろう。

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日本の物理学は人気が凋落する一方で、一般の人の多くは物理に苦手意識を持っている。学校の試験がトラウマになっている人も多い。

そういった人たちに物理学の面白さを伝えようと20年がんばってきたが、オレも、そろそろ、そういった仕事は卒業する時期に来ているようだ。

科学書界の古い体質を破り、さまざまな工夫をし、新しい流れを作ろうと努力してきたつもりだけど、やはり、独りじゃ「改革」は無理だった。物理を盛り上げる仕事は、若い人に託すことにしたい。(科学書界の「老人」たちと同じ考えの「若者」では、何も変わらないと思うが・・・)

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もちろん、オレの仕事は書くことだから、書くのをやめるわけじゃない。

今日、さる出版社から科学系のファンタジー小説の執筆依頼が来て、「ああ、オレは本当はこういうものが書きたかったんだな」って気づかされた。

20年、100冊を節目に、サイエンスライターの竹内薫には引退してもらって、科学作家の竹内薫として生まれ変わらなくては!

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