感度の問題
作家という職業は、ようするに「心」を描くのである。
それは科学作家とて同じことだ。そんなことに気づいたのは、しかし、この商売を始めて10年以上もたってからだった。
科学書というのは、通常、淡々と科学的な事実を書くものだと思われている。だが、実際には、科学者たちの戦いや葛藤や失望や夢といった「心」を描かなくては、単なるデータの羅列みたいになってしまう。
これは長年の修行(?)の末にゆきついた、私の境地みたいなものだと思っているが、心に敏感であることは、常にいいとはかぎらない。
世の中には、鈍感でないとうまくいかない場面が多々あり、そういった情況では、人の心の動きに敏感であることはよくない結果をもたらす。
科学の実験装置に喩えるならば、情況に応じて「感度」を鈍くしないと、針が振りくれてしまう、ということである。
最近、私は針が振り切れてしまうことが多くて、困っている。
どうしたらいいんだろうねぇ。
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