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神の手

ところで、マレーシアで妻のヨガの師匠だったジャミールという人は、いわゆる神の手をもっている。

当初、私は半信半疑でジャミールと会ったのだが、ウルットというマレーシアの伝統マッサージをしてもらって、その腕(というか手)に心酔してしまった。

週に1度はマッサージを受けている私だが、ジャミールの手は、これまでに経験したことのない感触で、まるで身体深くにスーっと入ってくるような気がした。

いや、なにも怪しいわけでなく、手と指によるマッサージが、温度といい、圧力といい、つぼの押さえ方といい、とにかく「完璧」なのだ。

彼は「強さはどうですか?」とか、「どこが疲れていますか?」などと質問したりしない。
もともと、インドのヨギについてヨガを習得しているせいか、ジャミールは、人間の身体について知り尽くしているようで、そこにウルットを加味して、独自のマッサージをつくっている。
だから、何もいわずに手を触れて、こちらがどれくらいの強さで、どこを重点的にマッサージしてもらいたかがわかるようなのだ。

これは、もう、生まれつきの才能としかいいようがないが、ジャミールの手が私の足に触れた瞬間、思わず、「おお!」と唸り声が出そうになったほどだ。

彼のヨガも素晴らしかった。
単に「息を吸って、息を吐いて」とか「爪先立ちになって」というような指示をするだけなのだが、その言い方に独特のリズムがあり、実に心地よい。
熱帯の夜明け、鳥の鳴き声、遠くから聞こえる波の音、湿気・・・その環境の中で、道具も使わず、ひたすらヨガのポーズを取り続けていると、自分が、精神的な別世界へと誘われているように感じる。

当初、私は、彼を日本に連れてきて、このリラクゼーション・ブームの中で活躍させようと思った。
だが、よくよく考えて、それはやめにした。

彼は自らに苦行を課したりはしない。彼は自らを一介のマッサージ師とみなしている。そして、その職業に誇りをもっている。彼の手は、おそらく、あの熱帯の環境の中でこそ神に近づくことができるのだろう。コンクリート・ジャングルに連れて来るのは残酷だ。

でも、マッサージとヨガが融合した、独特の世界は、いずれ、本か映像で日本に紹介したいのである。

私は、久々に作家魂をくすぐられたのである。

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