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ノーベル賞の精神

今年度の生理学・医学賞については、友人のMさんがブログに書いているが、あまりのスピード受賞に驚かされた。なんと、ワトスンとクリックのDNAの二重螺旋の発見の9年を追い抜いてしまった。

RNA干渉の基礎研究および臨床への応用の幅広さが評価されたのだろう。

物理学賞にも正直いって驚かされた。

やはり、COBEの観測データの発表から、さほど時間がたっていない。

もちろん、WMAPの業績のほうが、受賞してもおかしくないが、ここには、ノーベル賞ならではの「精神」が隠れている。

日本の田中耕一さんのときもそうだったが、ノーベル賞は、常に大きな成果の元となった「水源」のような研究に優先的に賞を出すのである。

華やかで数値的にもわかりやすいWMAPではなく、宇宙論を初めて精密科学の域まで押し上げて、来るべきWMAPへの道を開いた「COBE」(コービー)の立役者たちに賞を出したのも、そういった精神の反映だと見ることができる。

実際、COBE後の宇宙観測に関しては、WMAPだけが存在したわけではない。BOOMERANGなど、多くの天文・宇宙観測がひとつの明確な宇宙像へと収束したのである。

昨日のNEWS ZEROでは、「ビッグバンの存在を確定した」とか、「宇宙論を精密科学の域にまで押し上げた」とか、いろいろなコメントを考えたが、それでは、「ビッグバン」の解説から始めないと「報道」はできないことがわかり、断念した。

そして、控室で、目をつぶって、じっと知恵を巡らせていて、やはり、ノーベル賞の精神に沿った解説をするのがいちばんだと思った。

選択肢は単純だった。ニュースで全く触れないか、「源流」であることを重視して、思い切って「宇宙の年齢が137億歳であることを決めた研究」とコメントするかだ。一般ニュースの50秒という枠内では、それ以外にない。

もともと、私がNEWS ZEROに出させてもらう最大の理由は、ふつうのニュースでは、ほとんど「削除」されてしまう科学・技術の重大ニュースを「復活」させて、この国の科学技術の裾野を拡げたい、という強い思いにある。

おそらく、宇宙論に明るい人からすれば、「それはWMAPやBOOMERANGの成果だろう」ということになるだろうが、ノーベル賞は、やはり「水源」のほうに賞を出したのであり、それは、その水源から湧き出て大河の流れとなった現代宇宙論の華々しい成果全体に対して与えられたのだと私は信ずる。

わかりやすさと正確さ・・・それは、これまでの科学書でも散々遭遇した問題だったが、今後は、それに「秒刻みの時間」という新たな制約が入ってくる。

さまざまな御批判は、謙虚に受け止めたいと思います。
でも、この国の「科学応援団」の一員としての冒険と挑戦は、これからも続けるつもりです。

どうか、ご理解をたまわりたく。

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受信: 2006年10月 5日 (木) 09時25分

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