« 書評 | トップページ | カポーティ »

エッセイ

書かないで書く?

 作家になりたてのころは、万年筆と原稿用紙が商売道具で、お気に入りの広辞苑と新字源とリーダーズ英和辞典が三種の神器だった。
 その後、万年筆の代わりにパソコンのキーボードが登場し、原稿用紙はワープロソフトに取って代わられた。辞書も、軒並み電子辞典やインターネットの検索へと様変わりした。
 今年に入ってからは、さらに大きな変化があらわれた。最初から書くのではなく、まず、編集者に対して「しゃべる」ようになったのである。それをテープに録って、専門の人がテキストに起こしてくれて、そこに修正や追加を入れながら「書いてゆく」。
 一見、テープ録りのほうが簡単なようだが、やってみると、これが正反対で、私の場合は、最初から書いたほうが断然早い。なぜなら、講演録をそのまま出版するのとちがって、今やっている方法では、テープ録りの分だけ、余計に手間暇がかかるからである。驚いたことに、しゃべってから修正するほうが、二倍近くの労力を必要とするのだ。
 では、なぜ、こんな面倒くさいことをやり始めたのかといえば、(私の場合、)しゃべってから書くほうが、文章の密度が適度に調整されて、読者にわかりやすいものに仕上がるからである。
 作家稼業を十五年続けてきて、ようやく、こんな簡単な事実に気がついた。我ながら呆れ返っているのだが、来年は、いったい、どんなスタイルで書いていることやら。こればかりは、自分でも見当がつかない。

(公明新聞)

|

« 書評 | トップページ | カポーティ »

「日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/136278/12272840

この記事へのトラックバック一覧です: エッセイ:

» 検索エンジンなら、グーグルでしょ! [落ちこぼれ中年おやじ@ブログ情報屋台]
米グーグルがユーチューブ買収 1960億円 サンフランシスコ──米インターネット検索大手グーグルは9日、動画投稿サイトユーチューブを16億5000万ドル(約1960億円)で買収することで合意した。グーグルにとっては創業8年以来で最大の買収。 [続きを読む]

受信: 2006年10月22日 (日) 20時02分

« 書評 | トップページ | カポーティ »