冥王星の話は「99・9%は仮説」でも大きく取り上げたが、当初、いろいろなところで書いていたにもかかわらず、なかなか「冥王星問題」の存在を一般読者に理解してもらうことができなかった。
なぜなら、NASAが「十番目の惑星」などと、センセーショナルに宣伝すると、マスコミも含めて、かなりの人が、「そうなのか」と思い込んでしまうからだ。
実際には、背後にさまざまな関係者の思惑や動機が存在し、その結果、「情報操作」に近いマスコミ発表がなされるものなのだ。
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俳優のメル・ギブソンさんが飲酒運転で捕まって、ユダヤ人を差別する発言をした、という報道の場合も、なぜ、そんな発言が飛び出したのか、という背景を(ニュースの現場にいないわれわれは)知りたいのだ。
たとえば、当時進行中だったイスラエルによるレバノン空爆と民間人の死傷者の問題が関係していたのか、それとも、もともとメル・ギブソンさんが人種差別主義者だったのかで、彼の行動の「見え方」は大きくちがってくる。
新聞やテレビのニュースを見ていて、いつも、そういった「背後」に隠れている「仮説」をもっと教えてくれよ、と不満を感じる。
ところが、最近の新聞の一部では、新聞記者の個人的な意見が前面に出過ぎていて、閉口させられる。
私が知りたいのは、その前段階にあったであろうたくさんの「仮説」なのであり、それを教えてくれさえすれば、後は、自分で判断する。
たくさんの「仮説」の部分を飛ばして、いきなり新聞記者が「答え」を押し付けてくるから、腹が立つのだ。
読者も視聴者も馬鹿ではない。自分たちで判断できる人がほとんどだ。ただ、肝心の「背後に隠れた仮説」の部分を知らないから、判断が下せないだけなのだ。
仔猫殺しの報道でも、毎日新聞の記事に反感を覚えた理由は、いきなり、「論旨明快」という意見を押し付けてきたことだ。
同じエッセイを読んで、正反対の見解をもった私としては、エッセイ執筆の背後にあったはずの「仮説」を調べて検証するのがあなたの仕事だろう、と言いたい。(つまり、作家に取材して、なんで、あんなエッセイを書いたのか、その動機などを調べるのが新聞記者の本来の仕事だ。)
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本日の産経新聞の一面と29面に出ていた「渡嘉敷島 集団自決」の記事は、そういう意味では、事件の背後にあった人間模様の生々しい取材であり、私の中では、さまざまな「仮説」が一気に収束した感がある。
読者は、こういう「隠れた情報」を求めているのであり、新聞記者の「私はこう思う」という個人的な意見ではない。
もし、オピニオンを発信したいのなら、新聞社を離れて、個人の評論家として勝負してもらいたい。ただし、ブログでのオピニオン発信は大歓迎である。(できれば匿名で暴露記事を書いてもらいたい。)
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最近、日経デスクトップ(有料)につないで、それから提携先の朝日コムに飛んで、最後に産経ネットヴュー(有料)を見る習慣になっているのだが、一つ気になることがある。
朝日新聞は、アジアとオセアニア向けにすでにネット配信を始めているにもかかわらず、日本向けの配信には踏み切っていないのだ。
その理由を読むと、海外で新聞が読めない人を優先とか、ネット環境が整備されていないと難しい、と書いてあるのだが、これを読んだ大部分の人は、即座に「嘘」だと感じるのではあるまいか。
だって、これだけブロードバンドが普及していて、産経ネットヴューが何の問題もなしにネットで紙面を配信している以上、朝日新聞だけ日本で配信できない、というのは説得力に欠けるからだ。(個人的には、早くネット配信を始めてもらいたい!)
朝日新聞が日本でのネット配信を躊躇している理由は他にあるはずだ。
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私は、もう、マスコミのタテマエ論にも、個人的な意見にもうんざりである。
欲しいのは、情報の隠された「ホンネ」の部分である。「仮説」が複数あってもかまわない。情報さえ出してくれれば、こちらで判断するから。
くりかえすが、読者も視聴者も馬鹿ではない。
甘くみたらあかんぜよ!