金曜日は附属高校に行って、恩師の黒澤先生と同級生の秋葉くんと寿司を食ったあと、光文社の柿内さんも含めて、いろいろな話をして、とても楽しかった。
校舎は、昔と変わらず、雰囲気がそのまま残っていて驚かされたが、心が若返ったような気がして、実に清々(すがすが)しい気分になった。
黒澤先生の「現代漢和辞典」には、いろいろな裏話があって、当初は、完全にあいうえお順に並べてしまう、というさらに画期的なアイディアだったのに、世の漢文の先生方が「部首」による配列に固執したため、大修館が腰砕けとなり、大幅な妥協を強いられたんだって。
大修館の腰砕けは、それではとどまらず、「漢語林」の廃止を検討していたのに、存続を決めたうえ、「現代漢和」と完全にかぶってしまう別の辞書を出したりして、結局のところ、「現代漢和」は、飼い殺し状態となり、もはや改訂もできないのだそうだ。
黒澤先生によれば、「漢語林」は実に立派な辞典だそうだが、漢文が専門でない一般の人間は、その三分の一の語彙については、一生、出会わない。
だから、そういった言葉を省いて、そのかわり、「引きやすく」て「説明が丁寧」な「現代漢和」のような辞書には、それなりの意義がある。
そこでオレは考えた。
「現代漢和」のいちばんの売りは「熟語索引」にあるわけだが、それも出版社側からの圧力による妥協の産物なのであれば、この際、別の出版社で文庫化してもらって、その際に完全に「あいうえお順」にしてしまえばいいのだ。
そうすれば、国語辞典としても使えて、なおかつ部首その他の漢文としての構造もビジュアルで理解できる「国語漢和ミックス辞書」ができるではないか。
今後一年くらいかけて、オレが各出版社をまわって、「国語漢和ミックス辞書」の文庫化をはたらきかけるつもり。
「現代漢和辞典」がでたときの出版記念パーティーには、教え子だった新潮社社長の佐藤さんも来ていたように思うが、社長になってしまうと、もはや、恩師の辞書を復刊する手助けなどできないのだろうな・・・。
あまりにもったいないので、こうなったら、出版社を百社くらい回っても、絶対にどこかで「国語漢和ミックス辞書」の文庫での復刊にこぎつけたい。
義憤にかられて、文化の伝道師が行動開始だ!
(いつのまにか、科学インタープリターが文化インタープリターになっておる)
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秋葉くんからは、附属高校がシンガポールの高校と提携した話を聞いたが、なんと、こちら側は予算がないので、生徒どうしの交流や交換留学などの費用はシンガポールもちなんだって。
おまけに、シンガポール航空が割り引き券を発行してくれるのだと。
天下の国立大学附属高校が、外国の援助で交流をしているという現実を目の当たりにして、思わず絶句。
うーん、OBは、この現状を知っているのだろうか? 少しは寄付して文化交流を援助してみたらどうだ?
資金集めに動き出さないといけないな。
(6月にマレーシアを訪れる予定だが、東南アジアの教育・文化・科学技術に対する姿勢には大いに学ぶべきところがある。日本人として恥ずかしいかぎりである)
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理系コースで物理をとっている生徒と秋葉くんのクラスからの参加者を含めて三十名ほどの生徒に「物理講義室」でアインシュタインと四次元の話をした。
この前の芸大講義と似た内容だが、今回は、芸術とか視点よりも、「考え方」に重点をおいて高校生向けに話をしたつもり。
教科書は「アバウトアインシュタイン」。(芸大講義のときもそうだった)
「アバウトアインシュタイン」から数枚のコピーをとって、それを見てみらいながら講義をした。
最後に別のページに載っているアインシュタイン語録を3つばかり紹介して締めた。
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なんだか、三十年もタイムスリップしちゃったなぁ。