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書評:パラレルワールド

「パラレルワールド」ミチオ・カク(著)、斉藤隆央(訳)NHK出版

 現代物理学からみた並行宇宙(パラレルワールド)の解説書である。
 第一部「宇宙」では、われわれの宇宙について、現在わかりつつある科学的な事実が紹介される。
 たとえば、われわれの宇宙は、アクセル全開で、ぐんぐんスピードをあげながら、加速膨張をつづけている。
 このままいくと、いずれ、宇宙はバラバラにちぎれ飛んで、絶対零度まで冷たくなって、真っ暗になってしまう。なんとも恐ろしい未来だ。
 続く第二部「マルチバース」では、いよいよ、宇宙が(われわれのもの以外にも)たくさん存在する、という驚くべき仮説が登場する。
「今、マルチバースの概念が、『宇宙(ユニバース)』という言葉自体を廃れさせてしまう新たなパラダイム・シフト(思想的枠組みの転換)をもたらしている」(410頁)
 もしかしたら、宇宙に数多く存在するブラックホールは、すべて、他の宇宙への入口かもしれない。
 超ひも理論によれば、われわれの宇宙は、本当は十一次元の拡がりをもっている。その高次元の中で、並行宇宙は、われわれの宇宙から、たった一ミリという目と鼻の先に浮かんでいるかもしれないのだ。
 われわれを取り巻く時間と空間は「ユニ(唯一)」ではなく「マルチ(複数)」であることが物理学者たちの間では常識となりつつある。
 第三部「超空間への脱出」では、加速膨張により冷え切って希薄になった死の宇宙を抜け出て、われわれの子孫が並行宇宙へと脱出する可能性が探られる。
 そのシナリオは、はたして物理学なのか、それともSFなのか。(実際、本書には、SF小説からの引用が非常に多い。)
 著者のミチオ・カクは、超ひも理論の研究で有名な物理学者で、数多くの専門論文や教科書のほかに、一般書も著している才人だ。
 知の第一線で活躍する科学者による「パラレルワールド」の報告は、われわれの想像力を宇宙へと誘い、改めて人生の意味を問い直すきっかけを与えてくれる。

(竹内薫・サイエンスライター、共同通信社、地方新聞各紙掲載)

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