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超ひも理論とはなにか

 私は作家になる前、カナダの大学で超ひも理論を研究していた。今でも、超ひも理論について書くことが多いのだが、その度に読者から抗議文が舞い込む。みな、口々に「難しくてわからない!」と叫ぶのである。
 超ひもは、原子や電子よりもずっと小さい、ひも状のエネルギーの塊のことである。そして、そのひもは、バイオリンの弦のように振動する。バイオリンの弦から、さまざまな高さの音が奏でられるのと同じように、超ひもの振動は、さまざまな素粒子を生む。
 つまり、超ひも理論とは、超ひもという名の「楽器」が奏でる、宇宙の音楽のことにほかならない。もちろん、銀河系も太陽も地球も人も猫も、ウランも銀も水素も、森羅万象は超ひもの振動から生まれる。そして、驚いたことに、超ひもが奏でる宇宙は、3次元ではなく10次元だというのだ!
 壮大かつ想像を絶する仮説だが、今のところ、超ひもが実際に存在する、という証拠は何もない。では、なぜ、物理学者は、このような仮説を研究するのか?
 これは私見だが、おそらく、人間には「起源」を追い求める習性があるのだと思う。この宇宙や生命や意識がどうやって始まったのか。それがどうしても知りたくなる。
 私は宗教心が篤(ルビ:あつ)いほうなので、それでは、神様はどうなるかが気になるところだが、残念ながら、超ひも理論に神様は登場しない。もしかしたら、それが、私が物理学者ではなく作家に転じた理由かもしれないのだが。

(公明新聞・2006年2月14日文化欄「文化最前線」掲載)

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