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耳が痛い

センター試験でICプレーヤーを使うことになって、同時通訳で有名な鳥飼久美子さんが「反対」を表明しているが、同感である。
(出典がわからなくなった。勘違いの場合は御指摘ください)

すでに機器の不具合により大問題になっているが、語学のリスニングというのは、非常に繊細かつ微妙な問題を含んでいるので、ICプレーヤーの導入はまちがいだと思う。

むかし、こんなことがあった。

モントリオール在住の留学生がオレの部屋に集まってテレビを見ながら食事をしていたのだ。
すると、ニュースの時間になった。
何気なくアナウンサーの声に耳を傾けていると、留学生仲間のひとりがおもむろに立ち上がって、
「音が小さくて聞こえないね」
と言ってテレビのボリュームを上げた。
それからしばらく、みんなでニュースを聞いていたが、さきほどの彼が、苛立った様子で、
「このアナウンサーの発音はケベック訛りで聞きづらいね」
と発言した。

彼の頭の中では、まず、テレビの音量が小さすぎて聞こえず、次に、アナウンサーの発音が悪くて聞きづらい、という事態が進行していた。

だが、間近でニュースを聞いて、彼の行動を見ていたオレの中では、別の事態が進行していた。
彼は、英語のリスニングが苦手なのである。
ようするに耳(と脳)が英語に不慣れなのだ。
だから、聞き取れない理由を、まずは音量のせいにし、次に相手の発音のせいにしたのだ。

オレは腐ってもバイ(笑)なので、最初の音量で充分に聞き取れたし、彼が指摘したアナウンサーがもともと英語系でケベック訛りがないこともわかっていた。

***

別の留学生仲間とレンタカーを借りに行ったときも、その人が、
「Full insurance please」(保険はたっぷりにしてくれ)
と言ったのに、レンタカーの受付は、
「No」
と首を振ったので思わず笑った(失礼!)

今度は、彼の発音が悪くて、相手には、「Free insurance」(タダの保険)と聞こえているのだ。金を払わずに保険をつけろという、ずうずうしい客だと思われたのである。

海外で生活していると、こんな場面には何度も出くわす。

***

つまり、自国語以外の語学の「音」と「口」は、個人差が激しいのだ。
おまけにそれが、自分のせいであるという「自覚」もほとんどない。
みんな、自分の能力が劣っているなどとは思いたくないからな。
それが人情というものだ。

オレだって、フランス語が「できる」と豪語しているが、実際にはあまり通じないし、K妻など、
「あなたのフランス語はみんな英語にきこえるわ」
と指摘する。

***

センター試験では、実際の機器の不具合もあったのだと思う。
だが、ふつうに英語が聞き取れる人であれば、多少雑音が入ったって聞き取れるのである。
救急車のサイレンや人の声がかぶさっても、日本語だったら聞き取れるのと同じだ。
片耳だって聞き取れる。

かなりのパーセンテージで、「聞き取れない」ために「機械が故障している」という申告が増えたに相違あるまい。

ただでさえ、受験会場では緊張するものだし、ちょっと雑音が入っただけで、その雑音が何倍にも増幅して感じられたとしても不思議ではない。

大学入試センターは、何度も機器の点検を繰り返したというが、緊張した情況での聞き取りに際して、受験生がどのような心理状態におかれるかは考えなかったのだろうか?

***

こんなことなら、音質のクリアな音響システムを全会場に運んでいけばよかったのではあるまいか。
で、それでもサイレンの音で聞き取れなかった、という文句が出たら、サイレンの聞こえた会場だけでやりなおせばいいんだよ。

もちろん、事前に試験の内容とは関係のない日本語や英語を流して、その教室の全受験生がちゃんと聞き取れるかどうかを試すことが必要だが。

いったい、誰がICプレーヤーにしたら大丈夫、なんて言い出したんだろうねぇ。

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