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文化最前線

「ロバストネスとはなにか」

 科学作家(ルビ:サイエンスライター)という職業は、自分で本を書くだけでなく、科学者を取材して一緒に本を書くことも多い。ここのところ、私は北野宏明(ルビ:きたのひろあき)さんというシステム生物学者のところに足しげく通って、テープ録りをしながら本をつくっている。
 北野さんの研究分野は「ロバストネス」という聞き慣れない概念が鍵を握る。ロバストは、日本語にすれば「頑健な」とか「強靱な」となるだろう。システムの話としては、「内乱・外乱に負けずに機能を維持しつつ進化する」というような意味をもっている。
 たとえば生き物はロバストでなければ死んでしまうし子孫も残せない。企業や組織もロバストでないと淘汰されてしまう。
 面白いのは、いくらシステムがロバストになっても、必ず弱点が残ることだ。これは英雄アキレウスが踵に矢を受けて死んだ、という神話を思い起こさせる。
 たとえば最新鋭のハイテク航空機は、乱気流などにもコンピューター制御で対処できるから、ロバストなシステムだ。でも、万が一、電源が落ちたら、とたんに操縦不能となり、墜落の危機におちいる。
 あるいは、人間の身体を蝕む癌もロバストなシステムなので、根絶するのが難しい。北野さんは、最近、癌の「アキレス腱」を探していて、そこを叩くことにより癌というシステムを破壊しようとしている。まだ臨床試験の段階だが、システム論という、一見、医学とは縁のないような分野の発想が、病気に苦しむ患者さんを救う可能性があるのだ。

(公明新聞 2006年1月17日 文化欄掲載)

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