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夜の散歩

出過ぎた杭・・・じゃなくて、腹を引っ込めるべく、毎夜、散歩に出かけるのが日課になった。

今日は、曇りで火星も見えないねぇ。

早足で遊歩道を歩いていると、背後から人の気配が。
やがて、オレが早足で歩いているにもかかわらず、自転車を押している男と、この寒空にミニスカートの女が、オレの横を追い抜いて行った。
若い男女だが、男は、会社帰りなのか背広姿で、女のほうは、近くの家から出てきたのか寒そうな恰好をしている。
顏は見えなかった。

二人は、いつのまにかオレの前から消えた。

十分後、オレが「ツルツル滑る歩道橋」で折り返して、コンビニに寄るために公園を突っ切ろうとすると、なにやら人気が。
歩きながら目を凝らすと、なんと、さきほどの二人組が、ベンチの上で重なっている?
なぜだ?
急病で倒れたのか?
それとも・・・。

「もしもし、大丈夫ですか」
と、近づいて声をかけそうになって、オレは、凍りついた。
ま、まずい。
この二人は、ただいま、なぜか、この寒空の元、冷たいベンチの上で事に及んでいるのだった。
オレに振られた役柄は、急病人を助ける紳士ではなく、単なるノゾキのオッサンなのであった。

この瞬間、もしも、女が、「きゃあ! ノゾキよー!」と叫び声を上げて、男が、「なんだ、このジジイ!」と怒って殴りかかってきたら、オレも、「きさまら! 会社帰りにこんなところでこんなことしていていいのか! ここは外なんだぞ、おまけに今は終電も終わった夜の一時過ぎなのだぞ!」と叫んで応戦することになるだろう。すると、男は、オレの胸ぐらを掴みながら、「ジジイ! てめえこそ、こんな時間にこんなところで何してやがんだ!」と詰問するであろう。オレはすかさず答える。「夜の散歩です」。

夜の散歩?
オレの背筋を冷たいものが流れた。
そんなこと、誰も信じやしない。
やがて、公園の裏の警察署から警官がやってきて、パトカーもやってきて、みんなでオレを訊問するにちがいない。
「あんたね、夜の散歩って、自分で言っていて無理があると思わない?」
走馬灯のように予測シーンが頭を駆け巡る。

オレが必死に妄想に耽っていると、ふと、男と女がオレに気づいて、動きを止めて、オレのほうに顏を向けた。
闇にきらりと四ツ目が光った。

気がつくと、オレは、声にならぬ雄叫びを発しながら、汗だくになって走っていた。
途中で何かに躓いて転びそうになりながら、オレは、公園を駆け出ると、誰もいないタイル張りの舗道を必死に逃げていた。

オレは、ただひたすら、走り続けた。
まだ見ぬ「自由」に向かって・・・。

(ほとんど実話です(汗))

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