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空中庭園

シンポジウムの後、隊長とショーン小山閣下と東芝ビルのクルーズ・クルーズで食事をした。
誰も知らないかもしれないが、ここは、東芝ビルであり、以前は東芝の本社機能がここにあった。
隊長も小山さんも何十年にもわたってこのビルに通っていたのだ。

「ここはむかし、阪急の食堂だったんですよ」
隊長がレストランの若い給仕に話しかけている。
「そうそう、あの上の右が中華で左に天麩羅の天一・・・か天国がありましたね」
小山さんも給仕に話しかけている。
給仕は、このレストランは10年前からあるのに、この空間に中華や天麩羅があったのは、いつのことかとでも言いたげに小首を傾げている。

「それって、いつ頃のことですか?」
私は二人に訊ねてみた。
「そう、もう、かれこれ50年になるか」
隊長が感慨深げに呟いた。
「いつも混んでた。阪急の売り子さんが、みんな、食事に来ていたし」
小山さんが遠くを見つめている。

その瞬間、私は、クルーズ・クルーズの大広間の二階に、50年前に存在した中華料理と天麩羅の店を見ていた。
そして、レストランは空いていたはずなのに、いつのまにか、大勢の人が、ひしめきあうようにして、がやがやと愉しそうに飯を食っている。
私は、ここには、今でも50年前の阪急食堂の魂が宿っているのだと気がついた。
だって、本当に見えたんだ。

***

帰り際、エレベーターに乗って、扉が閉まりかけているのに、隊長は、お辞儀をしているお店の人に向かって、必死になって、何かを伝えようとしていた。
「ここにはね、われわれの会社がね・・・」
だが、扉は閉まり、隊長は、途中で口を噤んだ。

食事の間、隊長も小山さんもやけに愉しそうだった。
遠い過去の出来事なのに、まるで、今現在起きているかのような話っぷりだった。

小山さんと隊長を見送って、夜道を歩きながら、私は、理由もわからず、涙が流れて止まらなかった。

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