« 小さな世界 | トップページ | ジョギング »

濁った奔流

日本の悪い奔流を感じ取ったのは、実は、大学時代だった。

当時の東大の学生には大きく分けて二種類の人間がいた。

ギラギラと出世街道の走り方ばかり考えている連中と、なぜ、自分がここにいるのか当惑している(しまった、と感じている?)連中だ。もしかしたら、このほかに、何も考えずに周囲が用意したレールの上を走ってきてしまった連中もいたかもしれない。

国会中継なんかに登場する人たちは、おそらく第一の部類だったんだろう。もっとも、片山さつきという人は少し年上で同じ時期に大学に通っていたはずだが、ミス東大というのは今も昔も意味不明で理解不能だよ。(毒舌御免! でも、あの人のしゃべり方がカンに障るのはオレだけか?)

文一という科類は、もしかしたら、多くの役人や国会議員のような人々の精神構造の「産卵場所」だったのかもしれない。
敬虔なキリスト教徒の家風(?)に育てられて、社会悪というようなものから隔離されて純粋培養されてきたオレには、なぜ、同じクラスの友人たちが、
「大蔵省は出世はいちばん遅い。いちばん若くて車がつくのは警視庁だ」
 などという話をしているのかが、まったく理解不能だった。
 
役所というのは、国民の税金でまかなわれているのであり、公僕という言葉もあるではないか。
それなのに、なぜ、その血税で自分が黒塗りの車に乗ることばかり考えているのだ。
だが、オレのそんな義憤は、そういったギラギラした連中にとっては、逆に理解不能だったらしい。
「じゃあ、おまえは、なんで、ここにいるんだよ」

***

諌早湾の干拓工事は、取り返しの付かない愚行だと思うが、誰もその濁った奔流を止められない。
小泉さんだって止められない。
一度動き出したら、人が何人死んでも、もう止まらない。
その根底には、人間の欲が渦巻いていて、黒塗りの車に乗ることが目標でしかない私欲にかられたエリートたちの網目が存在するからだ。

以前、養老先生が酒の席で、諌早湾の干潟を潰すことが環境に悪影響を与えることなど自明だ、とおっしゃっていたが、そういう「良識」は、黒塗りの車の連中によって潰されてしまう。そういう確固たる濁った仕組みがこの国を支配している。

八王子の山を切り裂く第二東名だって止まらない。
何万通の反対署名が集まろうが、なにしようが、絶対に止まらない。
小泉さんは、そういった無駄な高速道路の建設を阻止しようとしたが、最後の最後でうっちゃりを決められた。

***

田中真紀子という人は大金持ちだが、なぜ、あの人がそんなにお金をもっているのかを真面目に考える人は少ない。
もちろん、それは田中角栄という人がお金を儲けたからなのだが、いったい、どうやって儲けたのか。

田中角栄も田中真紀子も大衆に人気があるわけだが、だとしたら、諌早湾も第二東名も、その他もろもろの利権も、すべて大衆が後押ししていることになる。

大いなる欺瞞だ。

東大の文一も、新潟の選挙も、すべて濁った奔流の一環でしかない。

***

物理学科でも似たような発言を聞いて驚いたことがある。それは研究費の問題だ。オレにとって、大学の研究費も国民の血税から出ているという認識があったから、無駄に使ったり、自分のために使ったりすることは倫理に反するように思われた。
だが、昼飯を食いながら、ある友人は、
「そんなことどうでもいい。上から降ってくるんだから、好きに使えばいいんだ」
と平然と言ってのけた。

***

結局、この国の濁った奔流は、無数の目立たない「エリート」たちの倫理のなさ、公共心の欠如とともにある。

***

オレは、たまに自分が職業をまちがえたのではないかと悩むことがある。
自分の家がお寺かなにかで宗教者になることができたらどんなによかっただろう。
私利私欲の渦巻く濁った奔流から逃れて、まともな人の道を追求することができたら、こんなに毎日苦しむこともなかったのではないか。
そんな妄想を抱くことが多い。

***

思うところあって法学部に進まずに科学史・科学哲学をやり始めたころ、父親がポソッと呟いたことがある。
「薫は、以前のギラギラしたものがなくなってしまったな。それじゃ生きていかれんぞ」

親から見れば、他人を殺して自分が生き残る戦いを放棄した息子の行く末が心配だったのだろう。

今のオレは、たしかに他人を殺して自分が出世する類いの競争には、いっさい加わらない。

そういったオレの生き様を理解してくれる身近な人間もいない。

社会派の作家でもなく、反体制派のジャーナリストでもないオレは、今、あらゆることに宙ぶらりんの状態になって生きている。

ギラギラを失い、かといって、宗教者にもなれないオレは、次に何をなすべきか、自分でもわからないで足掻いている。

もしかしたら、それを知っているのは、オレではなく、読者だけなのかもしれない・・・。

|

« 小さな世界 | トップページ | ジョギング »

「日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/136278/6317280

この記事へのトラックバック一覧です: 濁った奔流:

» 西ナイル熱と蚊 [trade air]
クモの次はナイル熱です。 西ナイル熱が国内初の発症…川崎市の男性、米で感染か  厚生労働省は3日、米国から帰国した川崎市内の30歳代の男性会社員が、米国で流行中のウイルス感染症「西ナイル熱」と診断されたと発表した。  米国滞在中に、蚊に刺され感染したと....... [続きを読む]

受信: 2005年10月12日 (水) 21時27分

» ミス東大コンテストのミス受賞者は誰? 11/23締切 [Ike_rc941@eBet]
ミス東大コンテストのミス受賞者を予想してください。 東京大学 Miss&Mister Contest 12月27日(日)14:30〜 参考データのリンク先から候補者の情報を見られます。 ミス東大の注目度は年々高まっています。一昨年と昨年のMiss of Miss (※)で、ミス東大がグランプリと準グランプリに選ばれるほどです。 ※Miss of Missとは、各大学のミス受賞者が集まって、さらにグランプリを決定するミスコンテストです。... [続きを読む]

受信: 2005年11月17日 (木) 18時47分

« 小さな世界 | トップページ | ジョギング »