未来の活字文明
活字業界一本で生計を立てている一匹狼としては、将来の活字文明の動きから目が離せない。
流れを読み誤ったら、次の瞬間には、この世から消えてなくならないといけないわけだからな。
いきおい、情報分析も、真剣になろうというものだ。
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コンテンツ産業、コンテンツ産業と周囲が騒がしいが、二年ほど前にFさんという人に誘われてJAPAという交流団体に入った。毎日のように数え切れないほど、関係者からのメールが送られてくる。
Fさんというのは執筆畑の人で、周三郎の先輩でもあり、湯川薫の小説の取材に来てくれたこともあって、なかなか、できる人だ。
だから、当初、JAPAという集まりも面白いのではないかと思い、少し参画を試みた。
だが、コンテンツ産業にたむろする無責任な人々の言動を耳にするたびに、段々と腹が立ってくるようになり、しまいには、送られてくるメールを全て破棄することと相成った。
驚くべきことに、コンテンツ、コンテンツと騒いでいる人々は、まるで、コンテンツが「無から湧き出る」かのような議論に明け暮れていたからである。
つまり、完全なる「作り手無視」の態度だったのである。
もっと精確にいうと、情報配信などのコストはきめ細かく計算しているくせに、肝心の製作現場=作り手のコストがほとんどゼロなんだよ。
この問題は、テレビのアニメ配信でも製作コストがほとんどゼロ、という惨状がたびたび指摘されてきたが、みんな、頭のネジが緩みっぱなしなのではないか、と呆れて物が言えない。
他人じゃなくて、てめえの褌で相撲とれってんだ。
農民が種を蒔いて、肥料をやって、畑を耕して、一年かかって収穫しなければ、食料は流通しない。
それと同じで、コンテンツだって、誰かがつくらないと始まらないんだけどねぇ。
とにかく、コンテンツ産業の関係者は、作り手の品定めばかりやって、「あいつはここがだめだ」とか「あの人はいい線いってるけど、売れるにはあれが足りない」とか言いたい放題なのだが、一つだけ忘れているのが、作り手の側だって、ちゃんと流通の人々を見定めている、という点だ。
二人三脚という態度でいかないと、お互い、将来は明るくないんじゃないでしょうか。
うーん、もともと、Fさんに声をかけられたきっかけは、「作り手の人の参加が少ない」という理由だったのだが、やはり、作り手同士の連帯感のような場がないと、作り手無視の人々の中で腹が立つばかりなんだよね。お役に立てずゴメン。
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近い将来、活字文化は、やはり携帯型の電子ペーパー端末が支配的になるにちがいない。
縦書きブログの登場なども大きいと思うけれど、画面が「紙」にならないと、爆発的な普及にはいたらないと思う。
十年たたないうちに、家のパソコンや書店の端末や携帯電話経由で、本や雑誌をダウンロードして、電子ペーパーに表示させて読むようになる。これは、絶対になる。
逆にいえば、そうならなければ、活字業界は、このまま長期低迷を続けて、どんどん細ぼそりになるだけだよ。
つまり、グーテンベルク以来の大革命が、活字文明に訪れようとしているのだ。
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そうなった場合、活字文明は、電子情報化と紙の文化のいい点が互いに補うことになる。
ただし、配信の形態がどうなるかはわからない。
予測その1 現在のテレビのように広告収入でまかなって、読者にはタダで届けられる
予測その2 電子的な保護を完璧にして、「その」電子ペーパー端末でないと表示ができないような仕組みにして、コンテンツごとに課金する
実は、かなり前から、単行本にも広告を載せたほうがいい、という意見をもっているくらいなので、できれば、「予測その1」の形態が普及するといいと考えている。
かなり、実現は難しいだろうが。
大儲けをしたい作家は別として、多くの作家や漫画家やコンテンツの作り手は、安定的に好きな作品を作り続けたい、という気持ちをもっているような気がする。
金儲けをしたいなら、別の職業を選んでいる。
創作活動が楽しいから、あえて、作り手の側に回っているんだよ。
まあ、両方の形態が両立してくれれば、バランスがとれるかもしれないね。
あと、5年で、なんとか「グーテンベルク以来の革命」が起きてほしい。
そうしたら、オレは、現在は出版することができない究極の難解な思想書を出してやるからな(笑)
オレの場合、産経NetViewでは、お目当ての記事を100%から140%に拡大して読む習慣がついているのだが、電子ペーパーで小説を読むときも拡大機能を使うようになるのか・・・。
フリガナのようなものも必要に応じて表示させればいいわけだし、動画もリンクさせられれば、活字文化の幅は一気に拡がる。
今のところ、電子書籍業界は、携帯などを中心に市場が拡がっているようだが、本当の読書人を取り込むであろう次の段階が決め手になるにちがいない。
つまり、オレや、この日記を読んでいるような「読書人系」の取り込みだ。
うーん、ここのところいいことのない書籍業界も、実は、将来の展望はかなり明るい、というのが本当だろう。
少部数の小説や学術書なども比較的楽に出版できるようになり、この国の衰退しつつあった活字文化が再び多様化され、活性化されることを望んで止まない。
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